上司をパワハラで訴えると脅して良いのか?
男性Aは、ある会社の社員だが、評価は芳しくない。
遅刻してばかりいるが、反省の色を全く見せないし、それ以外の勤務態度も良くない。
上司Bが、業を煮やし、別室に呼んで注意しようとする。
すると、男性Aは録音機を出して、内容を録音し、人事部にパワハラされたと報告すると警告。
上司Bは、注意を躊躇。
男性Aは、こんな様に、注意しようとする上司らをことごとくパワハラで人事部に報告すると脅していた。
男性Aの行為は違法か、違法ではないのか?
北村弁護士の見解:違法ではない
「これは違法ではありません。『録音しますよ』と言っている訳ですね。録音に耐えられない様な叱責しか出来ないなら、上司辞めれば良い訳で。遅刻なら遅刻、ミスならミス、これをきちんと理由も説いて、良い方向に持っていくのが叱責です。録音されても全く怖くないです。この程度では違法とは言えません。」
本村弁護士の解説に対して:
「『録音しますよ』と言っている。これは、人事部に言われた時にラッキーなんですよ。録音してあるという事は証拠が残っていますから、どの様な叱責の仕方をしているかはっきり分かる。上司としては非常に助かる訳です」
北村弁護士の見解は、まともと言えばまとも。
録音されたところで、パワハラめいた叱責でなければ、パワハラの証拠に成り得ず、男性Aは録音内容の持って行き所が無い。
一方で、北村弁護士は上司に求め過ぎる感があるが。
大渕弁護士の見解:違法ではない
「違法ではありません。『人事部に言いますよ』と言われた事は、確かに嫌な気持ちはします。上司はパワハラをやっていない。しかも人事部に言われた所で、人事部もそれを鵜呑みにする訳じゃないんですよね」
大渕弁護士の見解もまとも。
人事部も、パワハラの訴えを鵜呑みにするとは思えない。きちんと社内調査するだろう。男性Aの勤務態度が明らかになれば、訴えに正当性が無いのも明らかになる筈。
寧ろこんなのを社員として採用した人事部が責任を問われそう。
菊池弁護士の見解:違法
「人事部は考査上、マイナスポイントを付ける権限を持っています。そういう部署に『言いつけますよ』これはやっぱり効くんですね。叱り始めてもいない段階で、『パワハラです』『人事部にいいます』これは脅しです」
本村弁護士の見解:違法
「一般的な上司の感覚からするならば、『パワハラ上司だ』と人事部に訴えられる事自体が、不名誉な事なんです。嫌な事、怖い事なんですよ」
北村弁護士の解説に対して:
「録音しますと言われたら、びくっとするんですよ。言いたい事が言えなくなるんです」
菊池弁護士と本村弁護士の見解では、会社の人事部は無限の権限を持っている一方で、現場の実情に疎い印象を受ける。
実際の人事部は、そこまで権限が無いだろうし、現場とも連携しているだろうに。
上司の方も、叱責する前に人事部に対し「男性Aは遅刻が多い上、勤務態度が悪くてろくに使えない。どうにかしてくれ」と伝えておく、という対応は取れないのか。そうしておけば、仮に男性Aが人事部に現れてパワハラを訴えた所で「貴方の勤務態度ではこの程度の叱責は止むを得ない」という事になるだろう。
もしくは、上司らが結託して、男性Aを次々叱責する、といった行動は取れないか。男性Aが立て続けに人事部にパワハラ問題を訴えてきたら、人事部も「この部署がおかしいのか、訴えている方がおかしいのか」と考えるだろう。
組織が個人に対し不正を働くのは良くない。が、個人を守る対策を講じ過ぎると、今度は個人が組織に対し不正を働く可能性が高まるので、難しい。
それにしても大渕弁護士、て出てて大丈夫なのか。(^~^;)
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